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白曲見 © TOSHIRO MORITA |
能は、能面を身につけて行う、一種の仮面劇です。能面の基本型は、約60種、今日では、二百数十種あるといわれています。
仮面をつけ、顔を覆うことは、化粧と同じように人の変身と関係するといわれますが、能面は、扮装の道具という以上に、能役者に一種のパワーを与える呪物の要素があるといわれます。能面は、「おもて」といわれ、曲の位(くらい)を支配するほど能楽師にとって重要なものなのです。ほとんどの場合、能面には役専用の面はなく、演目によって種類が決められています。最終的にどの面を使うかは、シテに任され、使用できる面から選ばれます。
能面が、どのようにして発生したのかは明らかではありませんが、今日のような名称の能面が完成したのは、室町中期から末期にかけてと考えられています。それ以前の能面は、まだ様式化されず、宗教性が強いものでした。室町中期から末期にかけて、能面は、宗教的な意味を持つ役柄だけに使用されるのではなく、実在の人間を表す場合にも使われるようになります。これは、能の演劇表現が、「幽玄美」を重く扱い、美的表現を強く表すため、顔の表情変化や、顔の衰えの醜さを隠すことが求められるようになったためと考えられています。
室町末期から近世にかけて、能面を作る面打ちが、世襲の家の「芸」として確立されます。越前の出目家、近江の井関家などが有名です。世襲の面打ちが登場することにより、能面の様式化が益々進みます。現在でも、能面を作る面打ちは独立した職業であり、能楽師で能面を打つ人もいますが、ほとんどの場合、互いに独立した存在となっています。
能面の表情は、「中間表現」と呼ばれるように、喜怒哀楽を形容しがたい表情に作られています。感情をあらわにしない能面に、表情を与えるのは、能楽師の技なのです。
能面の感情表現でよく知られているのが、「テル」と「クモル」です。顔をやや上に向けることを「テラス」といい、笑っているようにもみえるのです。逆に顔をやや伏せることを「クモラス」といい、泣いているようにも見えます。基本的には、能面の動きは単純ですが、ほんの僅かな動きで感情の機微を表すのです。
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面をつける 吉田篤史 © TOSHIRO MORITA |
中将面の裏側 © TOSHIRO MORITA |
能面は、装束などと同様、代々家に伝わる貴重な文化財です。
装束をつけ終えた能役者は、「鏡の間」の鏡に向かい厳かに能面を身につけます。能面は「かぶる」とはいわず、「かける」「つける」と言います。身に着けて、肉体と一体化することで、能楽師の心と仮面が一体となり、演じ手の心が表現できるのです。
実際の能面は、すっぽり覆うものではなく、顔より少し小さいく顎が少しはみ出して見えるくらいが良いとされています。
また、能面の目の穴は非常に小さいので、面をかけると視野が極端に狭くなります。舞台の上で方向を定めることも容易ではありません。能舞台には、柱など、能役者が狭い視野でも方向を見誤らないような工夫がなされているのです。
能では、登場人物は、全員面をつけるわけではありません。主役のシテとそのツレだけが「つける」のです。ワキは能面をつけないのが原則で、これを直面(ひためん)と呼びます。これは、ワキが生きている人間の役だからです。
しかし、直面の場合、顔も能面とみなされます。面をつけていなくても、喜怒哀楽など顔の表情は露わにされることはありません。また現在能では、シテやツレが直面の能もあります。
能面の画像や種別に関してはこちらの「能面辞典」もご覧ください。
その曲に専用で使われる面には、翁、景清、山姥、弱法師、猩々などがあります。
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