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能の海外交流

[6]アーネスト・サトウから受け継いだもの ── Basil Hall Chamberlain (2)

アーネスト・サトウ
Sir Ernest Mason Satow, 写真はWikipediaより

頻繁に能を鑑賞し、謡本を収集したサトウ

チェンバレンの来日に先立つこと11年。1862年(文久2年 )9月、英国よりひとりの外交官が通訳見習いとして来日しました。その人の名は「アーネスト・サトウ」といい、当時弱冠19歳の若者でした。サトウというといかにも日本風の名前で、日本人が先祖にいるのでは、とか、改名したのでは、などと誤解されることがあるかもしれません。しかしサトウはスウェーデン出身の父親の姓であり、日本とのつながりは元来ありませんでした。ただ、日本に来てからは、佐藤などと漢字をあてて日本名を名乗ったそうです。後には日本人の妻を娶り、子どもももうけました。

サトウは、来日直後に生麦事件(1862年)が起き、それに端を発した薩英戦争(1863年)の現場を経験し、さらには馬関戦争(1864年)にも立ち会い、また明治維新を推進した志士らとも交遊がありました。幕末の日本を外部の視点から見つめたまさに生き証人であり、なおかつ明治維新という日本内部の革命的な活動にも積極的に関わった当事者でもありました。英国の駐日公使ハリー・パークスの書記官を長く勤め、後に自身も駐日公使となって約25年の歳月を日本で過ごし、さまざまな書物を著しています。そして日本や日本文化、幕末から明治にかけてのなまなましい歴史を英国に紹介する役を担いました。

幕末から明治の歴史を、外国人の視点から描き出したサトウは、日本ではかなり知られていますが、彼が能に興味をもっていたことはあまり知られていません。彼は幕末から早くも能に着目し、頻繁に演能の催しに出かけては能を鑑賞し、謡本の収集を続けていました。宣教師の時代から後では、このサトウこそが、もしかしたら外国人の能研究や海外交流の魁になった人物かも知れません。彼が1868年(慶応4年)、麻布で金剛太夫の能を観たことが記録に残っていますが、こういった史実から、当時の日本でサトウは、「能に興味をもっているイギリス人」として、それなりに認知されていたという指摘もあります。

チェンバレンはサトウと親交がありました。チェンバレンが能にご執心なのをサトウはよく知っており、日本を去るときには、自分が長年集めた約百番に及ぶ謡本をチェンバレンに託しています。チェンバレンの能楽研究は、このような親交にも支えられたのです。

 

チェンバレンが後世に託したこと

B.H.チェンバレン
Chamberlain ©愛知教育大学

チェンバレンの弟子のひとりに、国文学者の佐佐木信綱がいます。彼は直接に大学で指導されてはいませんが、相当親しく教えを受けていたようです。チェンバレンは自身が日本を去り、スイス・ジュネーヴに居を移すとき、サトウから譲られた謡本を、今度は佐佐木信綱に託しています。佐佐木信綱の言によれば、その多くが、世の中に知られずに埋もれていた珍本でした。彼は、チェンバレンから託されたこれらの謡本を「生き形見」と見なし、新たに『新謡曲百番』として1912年に博文館から出版します。この本にはチェンバレンから序文が寄せられ、元資料となった謡本が、サトウからチェンバレンの手を経て佐佐木信綱に寄贈された経緯が綴られています。

外国人の能楽研究の先駆者となったチェンバレンは、サトウの残した業績を受け継ぎ、それを惜しみなく日本人の弟子に還流させました。後世への礎を築いた彼が託したのは、歴史的な価値ある謡本という資料だけではなく、その誠実で懐の深い学者的態度であったとも思われます。

 

チェンバレンの翻訳文を味わう

最後に実際にチェンバレンが翻訳した謡曲の翻訳文から“The Robe of Feathers”(邦題:羽衣)を紹介します。今使用されている英語とはだいぶ様相が違い、また相当の意訳になっていますが、彼の感じた能の詩情を味わってみてください。

> The Robe of Feathers (羽衣:B.H.チェンバレン訳)


【参考文献】

    • 『明治能楽史序説』古川久 著(わんや書店 刊)
    • 『外国人の能楽研究 21世紀COE国際日本学研究叢書1)』野上記念法政大学能楽研究所編(法政大学国際日本学研究センター刊)
    • 『日本人の古典詩歌 かりん百番 9』B.H.チェンバレン 著 川村ハツエ 訳(七月堂刊)

 

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